経営者伴走支援:カウンセリング&コンサルティング

組織らしくない会社を抜本的に改善。
人事評価制度も導入し、前向きでチャレンジ精神のある社風に

福岡県久留米市で建設コンサルタント、測量事業、補償コンサルタント、開発業務などを行っている株式会社西日本測量設計。代表取締役社長の楢原靖弘氏は、創業者である父の跡を継ぐために同社に入社したところ、社内のさまざまな問題点に気がつきました。それらを解決すべく、エイマーク合同会社(以下、エイマーク)の代表兼CEOの関家康文氏(以下、関家)に経営についてのコンサルティングを依頼。一体どのような手法で問題解決に取り組んだのか。楢原氏に話を伺いました。

組織として機能していない会社に危機感を感じていた

―エイマークに依頼される前に抱えていた問題を教えてください。

 一番大きな問題は「会社が組織として機能していない」ことでした。私は元々、大手建設コンサルタント会社で技術者として働いていましたが、2010年に、父の跡を継ぐために西日本測量設計へ入社。いざ社内の状況を見てみると、役職のついた社員はいるものの、役職としては機能しておらず、誰が何を担当しているのかもはっきりしない状態でした。さらに、部署によっては服装がだらしなかったり、タバコを吸いながら仕事をしていたり……。きちんとした会社組織で働いていた私からすると、非常に違和感がありました。そんな状態ですから、納期の遅れやミスなども発生しており、危機感を感じていました。

 父は会社勤めの経験が少なく、若くして当社を立ち上げたため、どうも会社組織というものをわかっていなかったようです。人事評価制度なども存在せず、誰を役職にするのか、誰がどれくらい給料をもらうのかも父の気分次第。私が専務になった際に、何人かの社員から「何を評価されて給料が変わったのかがわからない」といった声も寄せられました。そのため、人事評価制度の策定は課題の一つでした。他にも業務の属人化やチャレンジ精神を感じられない社風なども問題に感じていました。

―エイマークに依頼された経緯を教えてください。

 2021年、私は代表取締役専務に就任したこともあり、山積みになっている社内の問題を、スピード感を持って解決なければならないと感じるようになりました。そのため、プロの手を借りたいと考えていたところ、知人から3人のコンサルタントを紹介していただいたんです。そのうちの一人が、エイマークの関家さんでした。

「人事評価制度を導入したい」と相談したところ、関家さん以外の二人は制度の導入方法について説明してくれました。しかし、関家さんだけは「人事評価制度を作る前に、目標に対して組織的に目指していける人材と体制づくりができていないと、制度はうまく機能しません。経営計画や戦略を立ててから導入した方がいい」と指摘してくださったんです。当社の問題をすぐに見抜いてくれたことに魅力を感じて、関家さんにお願いすることにしました。

 また、関家さんはプロ経営者として多くの企業で取締役や事業責任者などの経営職を務めてきた経験があるほか、会社員時代も経営企画や営業など多様な経験と実績を持っていました。実践を重ねてこられているところも良かったですね。

理想の会社になるため、要因分析に取り組み、中期経営計画を策定

―問題解決に向けて、どのように進めていきましたか?

 最初に関家さんから言われたのは、会社をどのようにしたいのか、会社のあるべき姿や理想を書き出すことでした。理想を書いて、その後に現状を書く。「その2つのギャップが会社の問題点であり、それを要因分析することが大切」と言われたんです。そして、そこから課題や対応策を抽出することから始めました。

 問題が生まれた要因を見ていくと、こちらの問題とあちらの問題の要因の根っこが一緒だったり、挙げた問題点が大きすぎてもっと細かく分けて考えなければならないもの出てきたりして、非常に大変でしたね。かなりの時間をかけて関家さんと話し合いを重ねました。

―他にも取り組んだことはありますか?

 他には、大きく2つの課題が出ました。一つは、各事業部の全社員と同様に同量で話をすること。私は建設コンサルタント出身であるため、どうしても建設コンサルタント事業の方に意識が向きがちだったんです。さらに、会社が測量事業からスタートしていることもあり、測量部門の役員や社員は古株だらけ。後から入社した私からすると、なんとなく話しづらく感じるところもあり、彼らと距離があったのを関家さんに見抜かれていたのだと思います。しかし、関家さんから「社長となる方は社員役員に公平公正でなければいけません。会社全体を見わたせないと会社は良くならない」と指摘を受けたんです。そこから、少しずつ社員を呼んで話をするようになりました。

 もう一つは、全事業部について過去5年間のデータを集めて整理、分析をすること。「社長は収支や利益、人件費など会社にまつわる数字をきちんと把握して、データを元に判断するようにならなければならない」と言われたんです。実際にデータを見てみると、それまで受注が少ないと思っていた測量事業は、実は非常に高い営業利益を出していると判明しました。逆に建設コンサル事業は、業務量は多いのになかなか利益を出せていなかった。そういったリアルな状況がだんだん見えてきたんです。

―そうして分析をした結果、何に取り組んだのですか?

 私が2022年に代表取締役社長になったのを機に、中期経営計画(以下、中計)を発表することにしました。まず、1年間関家さんと一緒に考えてきたことをもとに、今後5年間で取り組む全社的なスローガンとして「常に一歩高い目標にチャレンジ」を決定。それから、1年間徹底的に取り組む4つのテーマを決めました。その後、全体会を開き、各事業の過去5年における受注件数や指名に入っている件数、金額などを整理し、会社の状況として社員に伝えたんです。その上で、用意していたスローガンやテーマを提示し、なぜそれらに取り組むのかを説明しました。

 これを皮切りに、私から社員に対して発信する場を意識的に増やして、年度初めと決算期、年末・年始の年4回は全体会をするようになりました。実は、これも関家さんから教わったこと。「人は30日や3カ月、3年といった“3の倍数”で変化が起きるもの。だから、1年に4回は社長の想いを伝える場を作るといいですよ」と言われたのを実践しています。

社員の姿勢も前向きに変化

―こうした取り組みの中、どのような変化が見られましたか?

 社員の姿勢に大きな変化が見られました。以前は私に反発していた測量事業のリーダーが、中計を発表した前後から非常に協力的になってくれたんです。彼が私に共感して、同じ想いで他の社員に働きかけてくれることが、今ではとても大きな力になっています。

 また、私が口を酸っぱくして「一歩高い目標にチャレンジしよう」と言い続けていた成果か、チャレンジしてくれる社員がとても増えました。自主的に自部署の業務量と残業時間を整理して、どうすれば利益率を改善できるかを提案してくれたり、非常勤のシニア技術士に依頼して橋梁設計の勉強会を開いたり。利益を出せていなかった補償コンサルタント事業も、自分たちで考えて「こういった新しい仕事にチャレンジしてみたい」と提案してくれました。このように自分で取り組むべきことを考えて動いてくれる人が、今かなり増えてきています。
―それはうれしい変化ですね。他にはどのような変化や成果が出ていますか?
2023年の9月に、人事評価制度の第一歩として等級制度を導入しました。現在は、各人に通知した等級とそこに求める人材像に対してどういった行動を取れているかを確認したり、等級制度に納得しているかを調査したりしているところです。社内でアンケートをとったところ、8割強の社員が制度に納得しているとの反応だったのでほっとしています。

―等級制度の導入はどのように進めていきましたか?
 これも関家さんとはかなりディスカッションしました。まず「中計で見据えた会社を作っていくために、社長が社員にどのようになってほしいかを考えてください」とお題が出されたんです。それをもとに、等級をいくつに分けるのか、それぞれの等級にはどのような能力が必要なのか、どんな人材であってほしいのかなどについて、時間をかけて話し合いました。おかげで納得して制度を決められましたし、社員から何を聞かれても説明できる自信もつきました。

社長のあるべき姿を教えてくれる、心強い相棒的存在

―エイマークに依頼して良かったと思うところを教えてください。

 壁打ちをしながら進められたのが非常に良かったですね。コンサルタントの中には、「御社の問題点はここなのでこうしてください」と方法だけを提案してくるところもあると思います。しかし、関家さんとは月に3〜4回オンラインで、毎回3〜4時間かけて話をしながら進めています。この時間でいろいろなことをディスカッションしたり相談したりしながら、実地で社長業について教えていただいている状態です。

 中でも、経営者として、社長としてのマインドセットや考え方を教えていただけるのが非常にありがたいですね。身近な経営者は父しかいませんでしたし、協会や団体などで会う方々にも、実際どのように経営しているかまではなかなか聞けません。だから、関家さんからは本当にいろいろなことを教えていただていると思います。でも、先生というほど距離が遠くなく、おこがましいですが心強い相棒といった存在ですね。

―関家から言われて特に印象に残っていることはありますか?

 一つは前述した「公平公正であらねばならない」こと。そして、「利益とは価値と効率からできている」ということです。例えば当社の場合、測量事業は効率化が図れています。であれば、そこに新技術を取り込むことで会社の価値が上がる。“効率”も“価値”も高めることで、“利益”が生まれる。「だから、価値と効率を忘れてないでください」と教えていただきました。ことあるごとに伝えてくれるので、理解が非常に深まります。

―関家のいいところを教えてください。

 厳しさがあるところですね。言い方は優しいですが、忖度なく指摘すべきことはしてくださる。遠慮や容赦はないので、自分に足りないところを気づかせてくれるし、成長させてもらっていると感じています。

 おそらく関家さんに出会わず一人で取り組んでいたら、路頭に迷っていたと思うんです。問題点がたくさんあって、優先順位をつけるのも難しかったでしょうし。それをうまく導いてくれて、結果として社員が変わり始めてチャレンジする人が増えている。これは本当にありがたいですね。

―今後はどのようなことに取り組みたいと思っていますか?

 具体的に数値目標を決めて、それを達成するためにどのような行動を取るのか、計画を立てて進めていけるようになっていきたいですね。PDCAを回しながら、達成してもしなくても、その要因を分析しつつ、より進化させたり改善したりしていきたいと思っています。これからも関家さんとディスカッションしながら、理想の会社を目指してさまざまなことに取り組んでいきたいです。

 

楢原社長
インタビューにご協力いただきありがとうございました!!

2023年09月01日